源泉所得税は基本的に毎月10日までが納付期限となりますが、源泉所得税の半期特例を適用している場合は7月10日と1月20日が納付期限となっています。
ポイント
上半期分の源泉所得税は7月10日までに納付する必要があります。
ちなみに、7月に納める税金としては、源泉所得税の他に事業税(第1期分)や住民税などがあります。
- 「源泉所得税の納付期限について知りたい」
- 「半期特例の具体的な手続きや必要書類を確認したい」
- 「半期特例のメリットやデメリットを知りたい」
半期特例を利用するための具体的な手続きや必要書類、さらにはそのメリットとデメリットについて気になっている方は多いと思います。
納付期限を過ぎると延滞金が発生するため、制度の基本を知り、早めに対応することが大切です。
また、半年に一度の納付となると、金額が多額になることが考えられるため、キャッシュフローの管理についても考えておく必要があります。
この記事では、源泉所得税の基本やメリットとデメリットなどについてまとめていますので、気になる方はぜひ最後までご覧ください。
源泉所得税の基本
源泉徴収とは
源泉徴収とは、給与や賞与などの支払う時に給与支払者があらかじめ所得税を差し引いて、あとでまとめて税務署に納める仕組みをいいます。
また、給与から差し引かれた税金を源泉所得税といいます。
会社が従業員に給料を払うとき、その給料からあらかじめ所得税を引いて、代わりに税務署に納付します。これにより、従業員は自分で税金を支払う手間が省けます。
一方、税務署の方でも、会社が代わりに税金を徴収して納めてくれるので、税金のとりっぱぐれが少なく、楽に税徴収できる制度になっています。
源泉徴収の対象者と対象所得
源泉徴収の対象者は、主に給与所得者(役員や従業員)です。
対象となる所得には、給与、賞与、退職金などがあります。
差し引く源泉所得税の計算方法
源泉徴収額は、給与や賞与の額に基づいて税額表を使用して計算します。
- 左の給与の範囲
- 上の扶養親族の数
上記2点から、差し引く税額が決まります。
「乙」は、他の会社でも働いているなどの、いわゆる「乙欄適用者」の方が、差し引くことになる金額になります。
源泉所得税の納付方法
源泉所得税は、専用の納付書に支払った給与や差し引いた税額を記載して、税務署や金融機関で納付します。
源泉所得税の納付期限
毎月納付の原則
原則として、源泉所得税は給与を支払った翌月の10日までに納付する必要があります。
例えば、6月に支払った給与に対する源泉所得税は、翌月の7月10日までに納付します。
毎月、納付期限が決まっているので、遅れた場合は延滞税等が発生する可能性があるので、忘れずに納付する必要があります。
半期特例の納付期限
源泉所得税の半期特例は、半年に一度まとめて納付できる制度です。
この特例は、小規模事業者が利用でき、月々の納付手続きを減らすことで事務負担が軽減されます。
例えば、中小企業などは半期特例を適用することで、1月〜6月分を7月10日までに、7月〜12月分を翌年1月20日までに納付できます。
半期特例の制度を利用するためには、源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請の手続きが必要な点と、給与の支給人員が常時10人未満である条件を満たす必要があります。
半期特例の納付期限の確認方法
半期特例の納付書は、税務署から送付されてきます。
送付された納付書をみれば、毎月納付か特例納付かの判断ができます。
- 「支払年月日」が、特定の日付を記入するのが毎月納付、期間を記入するのが特例納付
- 「納期等の区分」が、特定の月を記入するのが毎月納付、期間を記入するのが特例納付
上記の違いで判断することができます。
7月10日に間に合わなかった場合の対処法
源泉所得税の納付が7月10日に間に合わなかった場合は、できるだけ早く税額を集計し、納付書を作成して納付しましょう。
納付が遅れるほど延滞税または加算税が発生し、余計な費用がかかるため、迅速な対応が必要です。
例えば、納期限を過ぎてしまった場合、税務署から書類や電話等で問い合わせがくることがあります。しかし、遅れた日数が浅い場合は問い合わせ等がなく、延滞税の通知が来ないときもあります。
速やかに対応することで、延滞税の増加を防ぎ、トラブルを避けることができます。
>>>税理士に依頼する4つのメリットと3つのデメリット徹底解説!
源泉所得税の納付方法
源泉所得税の納付のみならず、国税の納付方法はキャッシュレス納付や従来の窓口納付などさまざまな方法から選択できます。
源泉所得税の納付方法
- ダイレクト納付
- インターネットバンキング
- クレジットカード納付
- スマホアプリ納付
- コンビニ納付
- 窓口納付
それぞれの方法について解説します。
源泉所得税の納付方法紹介
ダイレクト納付
ダイレクト納付とは、e-Taxで申告書等を提出した後、預金口座から指定した期日に、口座引落しにより税金を納付する方法です。
利用するためには、事前にe-Taxの利用開始手続を行った上、税務署に届出書を書面で提出する必要があります。(個人の場合、オンラインで届出書を提出することが可能)
>>>ダイレクト納付(e-Taxによる口座振替)の手続|国税庁 (nta.go.jp)
インターネットバンキング
インターネットバンキングやATMからの振込により、税金を納付する方法です。
利用するためには、事前に税務署へe-Taxの利用開始手続を行う必要があります。
>>>インターネットバンキング等からの納付手続|国税庁 (nta.go.jp)
クレジットカード納付
クレジットカード支払の機能を利用して、税金を納付する方法です。
また、利用するためには事前に「e-Tax」から手続を行う必要があります。
重要なポイントとしてお伝えしたいのが、クレジットカード納付による場合は、納付額に応じた決済手数料がかかることです。
納付額に応じて、83円~手数料が発生しますのでご留意ください。
>>>クレジットカード納付の手続|国税庁 (nta.go.jp)
スマホアプリ納付
スマホアプリ納付とは、スマートフォン決済専用のWebサイトから、利用可能なPay払いで納付する方法です。
利用可能なPay払い
- PayPay
- d払い
- auPAY
- LINEPay
- メルペイ
- アマゾンペイ
- 楽天ペイ
カード決済やQRコード決済が広がっている中、税金もPay払いで納付できる状況となっています。
ただし、納付金額が30万円を超える場合は利用できないことに留意が必要です。
>>>スマホアプリ納付の手続|国税庁 (nta.go.jp)
コンビニ納付
税金をコンビニで納付することも可能です。
国税庁HPを通じてQRコードを作成し、コンビニの端末で納付書を出力し、レジで納付できます。
こちらも30万円以下の場合に限り、30万円を超える場合はダイレクト納付や窓口納付の対応となります。
利用可能なコンビニ
- ローソン、ナチュラルローソン
- ミニストップ(いずれも「Loppi」端末設置店舗のみ)
- ファミリーマート(「マルチコピー機」端末設置店舗のみ)
なお、コンビニ納付の場合はクレジットカードや電子マネーが利用できない点にも留意が必要です。
>>>コンビニ納付(QRコード)|国税庁 (nta.go.jp)
QRコードだけでなく、バーコードによる納付も可能となっています。
>>>コンビニ納付(バーコード)|国税庁 (nta.go.jp)
窓口納付
専用の納付書を使用して、金融機関や所轄の税務署で現金で納付する方法です。
全ての税金の納付に対応している従来の方法です。
アナログですが、手っ取り早い方法でもあります。
>>>現金に納付書を添えて納付(金融機関又は税務署の窓口)|国税庁 (nta.go.jp)
納付書の書き方
納付書には、支払いした給与や納付する税額、納税者の情報、納付年月などを記入します。
- ①年度を記入 ※年度は4月~3月までの期間となります。令和5年度なら、令和5年4月~令和6年3月までとなります。
- ②所轄の税務署を記載 ※税務署番号は送付された納付書にはすでに記載されていますが、国税庁HPでも確認することができます。
- ③整理番号を記載 ※整理番号は事業開始の届出書を提出すると送られてきます。確定申告書に記載する整理番号と同じです。
- ④納付する源泉の期間を記載 ※上半期であれば、例えば「(自)令和6年1月(至)令和6年6月」と記載します。
- ⑤住所や電話番号、氏名を記載 適用には源泉の過払い金がある場合にその金額を記載します。
- ⑥支払いした給与の期間、金額、差し引いた源泉所得税を記載 ※上半期の場合は、1月~6月までに支払った金額、差し引いた所得税を記載します。
- ⑦税理士、弁護士、司法書士等に支払った報酬の額と報酬源泉の金額を記載
- ⑧年末調整の時の過不足があれば記載
- ⑨納付書に記載された金額を集計し、算出した税額を記載 ※この金額を実際に納めることになります。
半期特例のメリットとデメリット
半期特例のメリット
半期特例を選択するメリットについて解説します。
半期特例のメリット
- 手続きの簡略化
- キャッシュフローの改善
- 年末調整に余裕ができる
半期特例のメリットは、月々の納付手続きが不要となり、事務負担が軽減されることです。
手続きの簡略化
通常、源泉所得税は毎月納付する必要があります。
しかし、半期特例を選択すると、1年に2回(7月10日と1月20日)にまとめて納付できるようになります。
これにより、毎月の手続きが不要になり、納付書作成や集計作業の負担が軽減されます。
キャッシュフローの改善
毎月の納付を半年ごとにまとめることで、短期間の資金繰りが楽になります。
例えば、納付時期までに手元資金を確保しやすくなるため、他の事業活動に資金を回しやすくなります。
年末調整に余裕ができる
年末調整は12月頃から1月末にかけて行われ、年末調整の過不足をふまえた納付書の作成が必要になります。
ポイント
半期特例では1月の納付期限が1月20日になるので、年末調整の作業時間に余裕をもつことができます。
毎月納付の場合は、1月10日が納付期限となっているため、どうしても時間に余裕が少なくなります。ましては、年末年始の休日も入るため、営業日数自体が少ない時期でもありますので。
特例納付を選択することで、年末調整の作業を余裕をもって行うことが可能です。
半期特例のデメリット
半期特例のデメリット
- 大きな支払いが一度に来る
- 納付を忘れるとリスクが大きい
デメリットとしては、納付額が半年分まとまるため、納付時の資金繰りが必要となる点があります。
大きな支払いが一度に来る
ポイント
通常は毎月少しずつ納付するものが、半年分をまとめて支払うことになるため、一度に大きな金額を支払う必要があります。
これにより、場合によっては納付時期に一時的に資金繰りが厳しくなることがあります。
納付を忘れるとリスクが大きい
半期特例納付は半年分の源泉をまとめて納めます。
ポイント
納めることを忘れてしまうと、半年分の税金に対して延滞税や加算税等がかかってきますので、リスクが大きくなります。
最近は電子申告が普及したおかげで、源泉納付のお知らせもハガキでなく、メールで来るようになっています。
メールだとどうしてもスルーしてしまうことが考えられるので、忘れないようにスケジュール登録などで管理しましょう。
まとめ
この記事では、源泉所得税の基本情報から、源泉徴収の仕組み、納付期限、納付方法、納付書の書き方までを解説しました。
ポイント
源泉所得税の半期特例は、源泉納付の手続きを簡略できる便利な制度です。手間がカットできるので利用することをお勧めします。
しかし、半期特例は手続きの簡略化やキャッシュフローの改善といった利点がある一方で、大きな支払いが一度に来るリスクや納付忘れのリスクも存在します。
半期特例は大変便利な制度ですが、自社の状況に合わせて、適切な選択を行うことも重要です。
>>>税理士に依頼する4つのメリットと3つのデメリット徹底解説!
最後までご覧いただきありがとうございます。
執筆者:プレノト
会計事務所時代は法人、個人の申告を累計500件以上担当。現在はWebマーケター。