- 「減価償却とは何?」
- 「正しい会計処理を行いたい」
- 「減価償却の方法を理解して、確定申告の際に正確な申告を行いたい」
減価償却の方法を理解して、適切な経理や確定申告を行いたいと考えるのはとても重要なことです。
減価償却は、税務処理や税務調査といった観点からも重要なものであり、高額な資産に係るものが多いため、より適切な処理を心がける必要があります。
この記事では、個人事業主における減価償却の基礎や計算方法、特例等や減価償却の重要性についてまとめていますので、気になる方はぜひ最後までご覧ください。
減価償却の基礎知識
減価償却とは?
減価償却とは
減価償却とは、資産の購入費用を一度に経費にせず、何年かにわたって少しずつ費用にしていく制度です。
減価償却の対象となるものは、建物や車、機械などの高額なものが対象です。
具体的には10万円以上の資産が対象となり、法定耐用年数で何年かにわたり経費にしていくことになります。
例えば、10万円の機械を購入した場合、法定耐用年数が5年だとすると、毎年2万円ずつ減価償却費として計上します。
法定耐用年数とは
法定耐用年数とは、税法上で定められた資産の耐用年数、つまりその資産が使用可能とされる期間のことです。
減価償却の対象となる資産
減価償却は建物や車、機械など、一つ10万円以上のものが対象になります。
ここでは、具体的な減価償却資産をご紹介します。
減価償却の対象となる資産
- 社屋、工場
- 駐車場舗装、建植看板
- 製造機械等
- パソコン、厨房機器
- 特許権、商標権
- ソフトウェア
資産で購入した金額が10万円以上のものは減価償却の対象となるので、会計処理時には注意しましょう。
ちなみに「土地代」は減価償却の対象とはならず、経費にすることはできませんので、こちらも注意が必要です。
資産ごとの法定耐用年数
各資産ごとに法定耐用年数は違います。
各資産の法定耐用年数
- 建物の耐用年数は20~50年
- 車両は4~6年
- 機械設備は5~15年
上の法定耐用年数に基づいて減価償却費を計算します。
例えば、5年間使用できる機械を購入した場合、その購入費用を5年間にわたって分割して計上します。
法定耐用年数に基づいて計上することで、税法上、適切な経費計上が可能になります。
中古で購入した場合は、新品の場合の法定耐用年数ではなく、中古資産用に耐用年数を計算する必要があります。
>>>No.5404 中古資産の耐用年数|国税庁 (nta.go.jp)
減価償却の重要性
税務調査の観点から、減価償却の重要性について説明します。
建物や車といった資産は長期間にわたって使用するため、何年かにわたって分散して経費にすることになっています。
なぜ、減価償却が重要かというと、大きな資産を一度に全額経費にするとその年の利益が大幅に減少し、税金の計算にも大きな影響を及ぼすからです。
利益が出ている状況で、建物や車などの高額な資産を一度に経費にできてしまうと大幅に利益が少なくなるので、税金も少なくなります。
税務調査においても、減価償却資産を不正に経費にしていないか、とくにチェックされるポイントです。
ポイント
そして、減価償却を適切に行わないと、税務調査で問題が発生し、追加の税金や罰金が課せられるリスクがあります。
例えば、企業が新しい機械を購入した場合に、本来は減価償却で分割して経費にしなければならないのに一度に全額計上すると、利益が少なくなり、税金も少なくなります。
税務調査で指摘を受けると、適正な税額の計算に直して、追徴税や延滞税、不納付加算税などの税金を納めることになります。
減価償却は、資産の費用を適切に分配し、企業の財務状況を正確に反映させるために不可欠です。
税務調査においても、適切な減価償却の実施は重要な役割を果たし、企業の信頼性を高めることにつながります。
>>>税理士に依頼する4つのメリットと3つのデメリット徹底解説!
減価償却の計算方法
減価償却のおもな計算方法は「定額法」と「定率法」の2つの方法です。
それぞれの内容について解説します。
定額法と定率法の違い
- 定額法は毎年一定額を、減価償却費として計上する計算方法
- 定率法は初年度に多くの減価償却費を計上し、年々減少する方法
計算のイメージ
例えば10万円の機械を5年間で減価償却する場合
- 定額法では毎年2万円を計上します
- 定率法では初年度に3万円、次年度に2万円、以降は1万円ずつ計上します
定率法では初年度での経費計上が多くなるため、収益が多い場合に有利です。
個人事業主の減価償却方法
個人事業主が利用できる減価償却方法には、おもに定額法と定率法があることは先述の通りです。
減価償却方法を選択しなかった場合は、個人と法人では基本的な償却方法が違います。
ポイント
個人事業主は基本的に定額法を使用します。
また、届け出をすることで定率法などを選択することも可能です。
これにより、収益の状況に応じて適切な減価償却方法を選択できます。
ちなみに現況の法人の償却方法は、基本的に建物や建物附属設備および構築物、無形固定資産の償却方法は定額法、車両運搬具や器具工具備品の償却方法は定率法となっています。
減価償却の特例
少額減価償却資産の特例
通常、10万円以上の資産は減価償却の対象となりますが、特例を利用することで一括で経費にすることも可能です。
ポイント
少額減価償却資産の特例を利用することで、30万円未満の資産を一括で経費計上することができます。
例えば、20万円のパソコンを購入した場合、その年に全額を経費として計上できます。
これにより、当年度の所得を減少させ、税負担を軽減することができます。
この特例は、青色申告を行っている中小企業者である個人事業主に適用されます。
また、この制度を利用する場合は確定申告書に「少額減価償却資産の取得価額に関する明細書」を添付することが必要です。
年間300万円の限度がありますので、こちらも留意しておきましょう。
一括償却資産の特例
ポイント
一括償却資産の特例を利用することで、10万円以上20万円未満の資産を3年間で均等に償却することができます。
この特例を利用することで、法定耐用年数に関係なく、早期に経費計上が可能です。
例えば、15万円の機械を購入した場合、毎年5万円ずつ3年間にわたって経費計上しています。
これにより、収益の状況に応じて経費計上を調整することができます。
減価償却方法の選択
減価償却方法の選択と変更手続き
ポイント
償却方法を選択するためには届出書の提出が必要です。
適用を受ける年の3月15日まで「減価償却資産の償却方法の届出」を提出する必要があり、提出しない場合は、法定の償却方法で計算することとなり、個人の法定の償却方法は定額法となります。変更する場合も同様です。
また、新規開業の場合、償却方法を選択するときは、その年の確定申告提出期限までに届出書の提出が必要です。
選択した償却方法がしっかり利用できるように、届出書の提出を忘れないようにしましょう。
実践編:具体的な事例(定額法)
実際に資産を購入し、減価償却する場合の計算例をご紹介します。
償却する金額は年間での減価償却費になるので、年の途中で購入したものに関しては月数按分する必要がありますのでご留意ください。
車両の減価償却例
300万円の車両を定額法で減価償却した場合
車両 300万円 法定耐用年数6年:償却率0.167
計算例 300万円 ✕ 0.167 = 50万1千円
よって、501,000円を減価償却費として計上することになります。
法定耐用年数は「🔍法定耐用年数」と検索すると、国税庁のホームページで簡単に調べることができます。
パソコン・ソフトウェアの減価償却例
35万円のパソコンを定額法で減価償却した場合
パソコン 35万円 法定耐用年数4年:償却率0.250
計算例 35万円 ✕ 0.250 = 87,500円
よって、87,500円を減価償却費として計上することになります。
18万円のソフトウェアを定額法で減価償却した場合
ソフトウェア 18万円 法定耐用年数5年:償却率0.200
定額法による計算例
18万円 ✕ 0.200 = 36,000
よって、36,000円を減価償却費として計上することになります。
少額減価償却の特例
18万円 < 30万円 = 18万円
よって、18万円を減価償却費として計上することができます。
一括償却資産の特例
18万円 < 20万円
18万円 ✕ 3分の1 = 6万円
よって、6万円を減価償却費として計上することができます。
特例を利用することで当年度の所得を減少させ、税負担を軽減することができます。
これにより、資産購入の負担を軽減し、事業運営をスムーズに進めることができます。
不動産の減価償却例
5000万円の社屋を定額法で減価償却した場合
社屋 5000万円 法定耐用年数24年:償却率0.042
計算例 5000万円 ✕ 0.042 = 210万円
よって、210万円を減価償却費として計上することになります。
建物は、資産の中でも耐用年数がもっとも長く、実際の使用期間も長くなるため、長期間で償却をしていくことになります。
まとめ
この記事では、減価償却の基礎知識から計算方法、個人事業主が利用できる減価償却方法、特例と例外、必要な手続き、具体的な事例までを詳しく解説しました。
減価償却は、資産の購入費用を分割して計上することで、経費を平準化し、適切に経費計上する重要な会計手法です。
また、少額減価償却資産の特例や、一括償却資産の特例をうまく利用することで、節税を図ることも可能です。
特に個人事業主にとっては、適切な減価償却方法の選択と実施が、経営の健全性を保ち、税務上のトラブルを避ける鍵となります。
この記事を参考に、適切な減価償却の実務につながれば幸いです。
最後までご覧いただきありがとうございます。
執筆者:プレノト
会計事務所時代は法人、個人の申告を累計500件以上担当。現在はWebマーケター。