- 「税金を最小限に抑えたい」
- 「税金を減らして、事業に再投資したい」
- 「節税対策を知っておきたい」
こんなご要望に応える記事内容となっています。
基本的な節税対策を知っておくことで、いざ税金が発生するときに対策を実践することができます。
また、税金の負担を減らすことで、事業への再投資も可能となり、成長に必要な資金を確保することにもつながります。
この記事では、フリーランスなどの個人事業者の方向けに基本的な節税の方法をまとめていますのでぜひご覧ください。
個人事業者の節税対策
フリーランスや個人事業者の節税は
- 青色申告の特典を利用すること
- 小規模企業共済やセーフティ共済を利用すること
まず、この2つを押さえることが重要です。
理由は、青色申告の特典や小規模企業共済、経営セーフティ共済は、効果的な節税ができるからです。
例えば、青色申告の特典である「青色申告特別控除」は、複式簿記による記帳やe-taxによる電子申告などの条件はありますが、最大65万円の控除がうけられます。
また、小規模企業共済は国がやってる、いわば「個人事業者の退職金共済」ですが、支払った金額の全てが所得から控除できます。
フリーランスや個人事業者の方の節税対策として、まずは「青色申告の特典」や「小規模企業共済・経営セーフティ共済」を知っておくことが重要です。
具体的な節税方法
青色申告による方法
青色申告を選択することで特典が受けられ、効果的な節税方法が利用できます。
青色申告を利用するためには、事前に青色申告承認申請書を税務署に提出して、承認を受けることが必要です。
青色申告の特典
- 青色申告特別控除
- 青色事業専従者給与
- 貸倒引当金
- 少額減価償却資産
- 純損失の繰越し及び繰戻し
それぞれの詳細について解説します。
青色申告特別控除
青色申告特別控除とは、最大65万円の特別控除が受けられる制度です。
最大65万円の控除を受けるためには、青色申告の承認を得てから、次の要件をすべてクリアする必要があります。
65万円控除の要件
- 事業所得または不動産所得であること
- 複式簿記で記帳していること
- 確定申告書に貸借対照表と損益計算書を添付して期日までに提出していること
- 電子帳簿保存またはe-Taxで電子申告していること
1と2の要件を満たすと10万円の控除、1から3の要件を満たすと55万円の控除と段階的に控除を受けることもでき、すべての要件のクリアで65万円の控除を受けることができます。
青色事業専従者給与
ポイント
青色事業専従者給与とは、個人事業主が生計を一にする家族に支払う給与を、「専従者給与」として経費にできる制度です。
青色事業専従者給与を利用するためには、支給する金額や賞与額などを記載した「青色事業専従者給与に関する届出書」の提出が必要です。
例えば、月額20万円の専従者給与を支給すると、年間240万円の経費を計上することができます。賞与も合わせるとそれ以上の金額を経費にすることができます。
しかも、専従者給与は資金が外に出るわけではなく、家計に入るため、効果的な節税方法といえます。
所得を家族と分配することで所得が下がり、税率を下げることにもなります。
青色事業専従者給与を適切に活用することで生じる節税の効果は大きく、税金の負担を軽減することができます。
また、経費とするためには、その家族が業務に日常的に従事していることが前提条件であり、専従者に支払う給与額は、一般的な給与水準と比較して適正な範囲内であることが重要です。事前に条件を確認しておきましょう。参考:青色事業専従者給与と事業専従者控除|国税庁
貸倒引当金
ポイント
貸倒引当金とは、将来的に起こり得る売掛金や未収金の貸倒損失のリスクに備えて、一定額を費用として計上できる制度です。
例えば、商品の販売代金である売掛金や、お金を貸しつけている分の未収金が、万が一受け取れなくなった場合は、貸倒損失が発生してしまい、業績が悪化してしまいます。
貸倒引当金は、具体的には売掛金や未収金などの一定の金額の5.5%(金融業は3.3%)を、貸倒引当金として一時的に経費にできます。
貸倒引当金を利用することにより、突然の貸倒れによる臨時的な損失を軽減することができます。
貸倒引当金は任意で計上でき、経費で計上する場合は節税を図ることができます。
少額減価償却資産の特例
ポイント
少額減価償却資産の特例は、取得価額が10万円以上30万円未満の資産を、一度にその年の全額経費として計上できる制度です。
通常、10万円以上の資産を購入した場合は、何年かにわたって減価償却費として経費にしていきます。
しかし少額減価償却資産の特例を利用すると、例えば、29万円のパソコンを購入した場合、全額その年の経費にすることができます。
少額減価償却資産の制度を利用することで、資産を購入した年度に大きな節税効果が得られます。
この特例を利用するためには、確定申告書に「少額減価償却資産の取得価額に関する明細書」を添付して申告することが必要です。
経費にできるからといって、ムリに買ってしまうと、資金繰りにも影響してしまいます。
例えば、税金が出そうだから、「来年に買おうと思っているもの」を今年買うことで税金が安くなる、といった場合であれば、効果的な節税となりえます。
純損失の繰越し及び繰戻し
ポイント
純損失の繰越しとは、損失がでた場合に、その損失を繰り越し、来年以降の利益と相殺することができる制度です。
例えば、2023年に50万円の損失が出た場合において、2024年に80万円の利益が出たときは、50万円の損失を相殺して30万円の所得とすることができるというものです。
これにより、実際の利益である80万円ではなく、相殺後の30万円に対して税金がかかるため、税金を低くおさえることができます。
一方、純損失の繰戻しは、損失が発生した翌年度に過去の利益と相殺し、過去に支払った税金の一部を還付してもらう制度をいいます。
小規模企業共済
ポイント
小規模企業共済は、会社の役員や個人事業者が加入できる、退職金などを準備するための共済制度です。
小規模企業共済掛金は、全額が所得控除の対象となるため、節税効果が高いものです。
掛金は月1000円から選択できて、最高月70000万円まで掛けることができます。
例えば、小規模企業共済に加入し、毎月の掛金を所得控除にすることで、掛金に応じて年間の所得税を減らすことができます。
また、支払った掛金は、退職した時や事業を廃止した時に、退職金または年金として受け取ることができます。
ただし、途中で解約したり、掛金滞納で解約させられた場合に受け取る解約手当金は、掛けた金額より少ない額になる可能性があるので、請求事由については注意が必要です。
参考:小規模企業共済とは | 共済制度 | 独立行政法人 中小企業基盤整備機構 (smrj.go.jp)
経営セーフティ共済(倒産防止共済)
ポイント
経営セーフティ共済は、もともとは取引先の倒産による連鎖倒産を防ぐための共済制度です。掛金は経費にできるため、税金の負担を軽減できます。
例えば、経営セーフティ共済に加入し、毎月の掛金を必要経費として計上することで、所得が減り税金を減らすことができます。
また、万が一、取引先が倒産した場合には、無担保・無保証人で掛金の最高10倍の借り入れも可能です。
経営セーフティ共済は、税負担の軽減とリスク管理の両面で有効な制度です。
月額最高20万円まで掛けることができますので、マックスで年間240万円の経費を計上することが可能です。
総額800万円の掛金になるまで掛けることができて、解約すると加入期間に応じた解約手当金が受け取れるため、掛け捨てになりません。
経営セーフティ共済を必要経費にした場合は、確定申告時に明細書の提出が必要になります。
参考:経営セーフティ共済とは | 共済制度 | 独立行政法人 中小企業基盤整備機構 (smrj.go.jp)
親族を扶養にすることでの節税
家族を扶養親族として申告することで、所得控除を受けることができます。
控除額は、例えば配偶者控除や扶養控除で38万円、年齢制限がありますが19歳以上23歳未満の特定扶養親族は63万円の控除となり、節税の効果も大きくなります。
ただし、家族の方が所得が多いと扶養につけられませんので、注意しましょう。
親族を扶養家族として申告することで、所得控除ができて、税負担を軽減することができます。
節税の基本知識
節税の基本
ポイント
節税とは、合法的な手段を使って税金の支払いを減らすことです。
節税のメリットは、税金の負担を軽減することで、手元に残るお金が増え、個人や企業の財政状況の改善や、余裕資金が生じる効果が得られることです。
例えば、青色申告を行うことで特別控除を受けたり、小規模企業共済に加入して所得控除を受けることで、支払う税金を減らすことができます。
このように、節税は合法的に税金を減らす手段であり、正しく行うことで経済的なメリットを得ることができます。
節税しないリスク
ポイント
できる節税を行わない場合、ムダな税金を支払うことになります。
たとえば、青色申告の特典は、税務署に届け出を出して、複式簿記で記帳し、電子申告するだけで最大65万円の控除が受けられます。
つまり、お金をかけずに65万円の控除が受けられ、その分の税金が安くなるわけです。
節税にはお金をかける必要があるものもありますが、青色申告に関してはお金がかからないのでぜひ利用しましょう。
お金がかかる節税
- 小規模企業共済
- 経営セーフティ共済 など
小規模企業共済や経営セーフティ共済は掛けた金額が経費または控除になるので、実際にお金を支払うことが必要です。
しかし、小規模企業共済の場合は事業を廃止したとき、経営セーフティ共済は解約したときに、支払った掛金を解約手当金などとして受け取ることができます。
※解約金は加入期間や解約事由により変動します。
節税の注意点
節税を行う上での、注意ポイントについて解説します。
これから節税することを考えている方は、ぜひ目を通しておいてください。
節税の注意点
- 税法の範囲内で行うこと
- 節税に気を取られすぎた余計な出費に注意
それぞれの内容について解説します。
税法の範囲内で行うこと
ポイント
節税を行う際には、税法の範囲内で行うことが重要です。
違法な節税をしてしまい、税務調査で指摘されると、修正申告をしなければならなくなり、さらに追徴課税や延滞税、加算税が課されるおそれがあります。
しかしながら、違法なのか、適切な節税なのかは、素人ではなかなか判断が難しいところがあります。
そこで節税に関しては、専門家のアドバイスを受けることが推奨されます。
税務調査で指摘を受けないために、税法の専門家である税理士に節税の相談をしましょう。
余計な出費に注意
ポイント
節税に気を取られすぎて、余計な出費をしてしまわないように注意が必要です。
例えば、節税のために30万円未満のパソコンを買って、少額減価償却資産の特例を使い一括で経費にすると、確かに節税になりますが、資金も出ていくことになります。
節税に気をとられすぎず、資金繰りとセットで考えることが重要です。
節税は、各事業者の損益状況や財務状況の両方から検討し、適切な対策を打つことを心がけましょう。
専門家への相談の重要性
税理士に相談するメリットとデメリット
税理士とは、所得税や法人税、消費税などの税金の計算や、帳簿作成や会計のスペシャリストです。
また、仕事がら、税法面からの経営のアドバイスや、資金繰りの相談を受けるなど、ビジネスパートナー的な付き合いをすることが多い職種でもあります。
そんな税理士に相談するメリットについてご紹介します。
税理士のメリット
- 確定申告を依頼できる
- 節税のアドバイスが聞ける
- 税務調査で対応してもらえる
- 試算表の作成を依頼できる
まずは、税理士の本業である確定申告の依頼ができます。複雑な帳簿作成や確定申告を任せることで、確定申告のミスを防ぎ、税務調査のリスクを低減することにつながります。
そして、専門的な知識から、適切な節税対策のアドバイスが受けられます。
また、税務調査があれば、一緒に立ち合ってもらうことも可能です。
金融機関に提出する試算表の依頼もできて、税理士が作成した試算表となると、その正確性や信憑性が評価されます。
税理士のデメリット
- それなりに料金がかかる
- 一定の期間ごとに資料の準備が必要
- 自社でするより月次試算表が出るのが遅くなりがち
これは当然ですが、仕事を依頼すれば、税理士報酬という手数料がかかります。売上規模や取引量、契約内容により報酬が変わります。
多いのは月に一度、または四半期に一度のペースで資料の準備が必要です。領収書などや現金出納帳、通帳やクレジットカード明細などの準備をする必要があります。
また、資料を提出してからの処理となるため、自分で会計ソフトに入力するよりも、月次試算表などの経営資料が出るのが遅くなりがちです。
>>>税理士に依頼する4つのメリットと3つのデメリット徹底解説!
専門家に相談するタイミング
節税対策を検討し始めるタイミングで、早めに税理士に相談することが望ましいです。
税理士業界には、年末調整や確定申告、3月決算時期などの、いわゆる繁忙期があります。
おおよそ12月から5月くらいまでは繁忙期となるため、相談するタイミングによっては、断られる可能性もあります。
早めに相談することで、余裕を持って対策することができ、最適な節税プランも実現できるでしょう。
まとめ
個人事業者の節税の基本は「青色申告」といえます。
青色申告特別控除や、青色事業専従者給与などを利用することで、所得を減らし、税金を安くすることができます。
例えば、青色申告特別控除は最高65万円の控除が受けられ、青色事業専従者給与は家族に支払った給与を経費にすることができて、大きく所得を減らすことができます。
まずは、青色申告の特典を利用した節税をして、それでも足りない場合は、他の方法を検討するといったスタイルがよいでしょう。
また、ご紹介した「小規模企業共済掛金」や「経営セーフティ共済」は、経営者の退職金や取引先倒産のリスク回避などの、節税以外の有効な手段でもあるため、余裕があれば検討してみましょう。
この記事で紹介した方法以外にも節税方法はたくさんあります。
先述の通り、節税は税法の範囲内で適切に行うこと、資金繰りとセットで検討することなどが重要です。
税務や会計の専門家である税理士に相談するなどして、適切な節税を実践しましょう。
最後までご覧いただきありがとうございます。
>>>【初心者向け】帳簿作成から確定申告のやり方徹底解説 - 個人事業主のための簡単ステップバイステップガイド!
執筆者:プレノト
会計事務所時代は法人、個人の申告を累計500件以上担当。現在はWebマーケター。